03 June

白い仕付け糸








質素なアパートの部屋を
雨の夕暮れの
淡い青が濡らしている

鏡台の隅に
外された髪飾りが
     小さく湿った音をたてて置かれている

髪に触れることがないまま
光だけを少しずつ曇らせていく

裁ち台の上の
白い布は
まだ朝の形を覚えている

仕付け糸は
ほどかれる時を待っていたのではない

ほどかれなかったことを
静かに結んでいる

招待状は
封筒の内側で息をひそめ
小さな金の鐘は
鳴らない祝福として
引き出しの奥に沈んでいる

庭の白薔薇は
咲ききる前に首を垂れた

吸い上げる水は
もう昨日の
穏やかな水ではない

窓辺には
誰かのためではない椅子がある

座る者を失ったまま
雨の影が
静かに滲んでいく

からだを包むために
 丁寧に仕立てられた 白い布...

展げられないまま
来なかった朝を
しずかに隠すために
影の四隅は折りたたまれた

肩に
重さを預けることも
胸に
温度を移すこともなく

畳まれたまま
季節の隅で
かすかに息をしている

ドレスとは

着られなかった未来が
雨の青に濡れて
白くなる場所なのだ
















※ 先に書いた詩篇を完全に書き直しました。これはもう応答詩ではありません。